皆さんこんにちは。岩井です。
Summer'13のリリースが6月16日*となり、いよいよあと1ヶ月となりました。
年3回のメジャーバージョンアップで、毎回色々な新機能が追加されますので、新しい機能をすぐにお客様に提案できるよう、我々も毎回必死に追いすがっています。
さて、今回はSummer'13の新機能で、間違いなく目玉機能であろうChatterコミュニティについて取り上げたいと思います。
Chatterコミュニティという名前は前々からちょこちょこ露出していましたが、皆さんはどんなものかお分かりですか?
Chatterコミュニティは、これまで存在したパートナーポータルやカスタマーポータルからリプレースされる機能です。 実際にSummer'13のリリース後にはパートナーポータルやカスタマーポータルの新規契約はできなくなるそうです。 ただ、既にこれらのポータルを使用中のユーザは継続して従来のポータルの運営は可能ですのでご安心下さい。
このChatterコミュニティ、物凄く大雑把に言うと、パートナーポータルやService Cloud PortalにChatter機能が追加されたものと言うことになります。
しかしその正体は、単なるChatter機能の追加だけに留まらず、進化版ポータルとでも言うべきもので、Salesforce組織を運用している企業、パートナー、顧客にとって、様々なメリットを生み出せそうな戦略的な新機能になります。
Chatterコミュニティとは
SalesforceライセンスでChatterを利用しているユーザの方であれば、それがパートナーやカスタマー向けに標準オブジェクトへのアクセスや機能が制限されたものだと捉えて下さい。
Chatterコミュニティ for カスタマー
従来、カスタマーポータルではロールや共有が利用可能で、Service Cloud Portal(大容量カスタマーポータル)では、ロールや共有は利用不可となっていました。 また、2つのカスタマーライセンスのどちらも、リードや商談へのアクセスはできません。 Chatterコミュニティ for カスタマーについてはこれらのアクセス可能なオブジェクトの範囲や制限については、Service Cloud Portalの仕様に準じるようです。
Chatterコミュニティ for パートナー
パートナーポータルの場合は1社につき最大3階層のロールを持つことができますし、共有設定も可能です。
取引先や取引先責任者の作成・編集も可能ですし、リードや商談も使用できます。 地味に目立たないことですが、実は大きいと思うのは、従来のパートナーポータルライセンスでは使用できなかったダッシュボードが利用可能となっています。
グローバルヘッダ
Salesforceにログインした時に、Salesforceロゴが表示される部分の更に上に黒い帯が追加されます。 ちょうどGoogleのWebサイトにアクセスした時に上部にGoogle+やGmailや地図といったメニューが表示されるような感じです。この帯の部分をグローバルヘッダと呼ぶのだそうです。
右上には、これまではアプリケーション選択メニューの隣にあったログインしているユーザの名前が表示されるメニューが移動して、ユーザ自身の名前とアイコンが表示され、メニューを開くとプロファイルの編集やログアウトといった操作リンクが表示されます。
左上には新たなメニューが現れています。これがコミュニティを切り替えるメニューになります。 社内でChatterを運用していた組織の場合は、内部組織と外部向けのコミュニティを切り替えて使うためのものです。 ここで特定のコミュニティを選択することで、そのコミュニティ内での各種操作やコミュニケーションが可能になります。
コミュニティの設定画面
カスタマイズ→コミュニティ→コミュニティを管理する
から、コミュニティの設定画面を開けます。
コミュニティ公開に必要な設定項目が1画面に集約されていてとても分かりやすいUIになっています。
メンバーの追加
コミュニティにメンバーを追加するには該当コミュニティにプロファイル単位または権限セット単位で追加をすることで、該当プロファイルに属するユーザや権限セットを割り当てられたユーザはコミュニティを表示可能となります。
これまでのポータルではプロファイル単位でポータルへのアクセスを設定していましたが、ここで権限セットが使えるということは、ユーザ単位に複数のコミュニティへの参加・不参加を制御できるということです。 プロファイルベースより細かい単位でどのユーザをどのコミュニティに参加させるかを選択できるようになります。
コミュニティの切り替え
権限セットによって、複数のコミュニティに同時に所属できるようになったユーザが複数のコミュニティをすぐに切り替えできるようにグローバルヘッダが追加されました。
Chatterグループもコミュニティ毎に作成が可能となります。
例えばカスタマーのコミュニティを購買商品ジャンルで分けたり、パートナーのコミュニティを、販売や物流といった業務別にしたり、パートナーのグループ会社によって分けたりすることで、不要な範囲への情報漏えいを防止することが可能となりますし、Chatterを使用するユーザが外部に一気に広がるので、不用意にChatterグループが乱立してしまうことも防げると思います。
コミュニティのステータス
コミュニティは作成時には「プレビュー」になっていて、メンバーでなおかつURLを知っているユーザでなければアクセスできない状態となっています。
カスタマイズや動作確認を十分行った上で、「公開済み」に変更することで、メンバーからのアクセスが可能な通常運用の状態となります。
また、メンテナンスなどで一時的にアクセスを遮断したい場合には「オフライン」に設定することで、メンバーのアクセスを制限することができます。
コミュニティからのお知らせメール
コミュニティ設定で、「お知らせメールを送信」を指定していると、ユーザ(のプロファイルや権限セット)がコミュニティメンバーに追加された時や、メンバーとなっているコミュニティの状況が「公開済み」となった時に、自動的にお知らせメールが送信されます。
全自動でメールが送信されてしまいますので、お知らせメールのテンプレートやコミュニティ側の動作など、十分に準備が整った段階で公開するようにしましょう。
様々なブランディング
これまでのポータルでも可能であったように、Chatterコミュニティでもロゴ、ヘッダー、フッター、配色の変更が可能です。
設定→カスタマイズ→コミュニティ→コミュニティを管理する→編集したいコミュニティの「編集」→ブランド
から、各種ブランディングが行えます。
ヘッダーとフッターの変更
ドキュメントにアップロードしたhtmlファイルや画像ファイルに差し替えることができます。
・ヘッダーにはhtml,gif,jpg,png形式のファイル
・フッターにはhtml形式のファイル が指定できます。
htmlはヘッダーとフッターの合計容量で100KB以下である必要があります。 また、画像ファイルは1つ当たり20KB以下でないといけません。 ヘッダーには他に検索ボックスを追加することもできます。
Chatterタブの名前変更
標準のSalesforceではChatterタブは常に「Chatter」と表示されていました。 コミュニティではChatterタブの名前を任意の名称に変更が可能になります。
カスタマイズ→タブと表示ラベルの名称変更→コミュニティの [Chatter] タブ
から、コミュニティごとにChatterタブの名称を変更できます。
コミュニティChatterメールのブランディング
ポータルでメール送信者を設定できたように、コミュニティからユーザに送信されるメールの送信者のアドレスと送信者名の変更ができます。
メールのフッター部分にはデフォルトでChatterのロゴが表示されていますがこのロゴを変更することができます。 変更する場合は、ドキュメントに画像をアップロードして、「外部参照可」に設定しておく必要があります。 指定できる画像は背景透過画像で150×50ピクセルまでの大きさになります。
また、デフォルトでSalesforceの情報が記載されているフッターテキストも1,000字以内の任意のテキストに変更することができます。
これにより、メールについても「Salesforceからの」メールではなく、ユーザ企業からのメールとしてユーザに対して送信することが可能となります。
カスタムドメインおよびURLを作成
コミュニティのURLには「○○○.force.com」の○○○の部分にユーザ企業を表す文字列など、好きなサブドメインを設定できます。 また、「○○○.force.com/□□□」の□□□部分にもコミュニティ毎の文字列を設定できます。
ログインページのカスタマイズ
コミュニティユーザのログインページでも、ヘッダーロゴとフッターのテキストを変更可能です。
ヘッダーロゴはgif,jpg,png形式の画像が指定可能です。
容量は最大100KBまでで、サイズは250×125ピクセルまでです。
フッターテキストには120文字までの文字列を設定できます。
ログインページの配色はブランド設定の配色を引き継ぎます。
また、ポータルと同様、別途カスタムログインページを作成して使用することも可能です。
ログインオプション
コミュニティユーザがログインする時に、通常のユーザ名とパスワードによるログインの他に、
・SAMLによるシングル・サイン・オン
・外部認証プロバイダの認証情報
を使ったログインアクセスも可能です。
これにより、別のパートナー・顧客用ポータルサイトの認証情報や、Facebookの認証情報を使って、コミュニティにログインすることが可能です。
なお、コミュニティのログイン設定は外部ユーザにのみ有効なものです。内部のユーザは通常のログイン画面からのログインが必要です。
また、セルフ登録用ページを作成しておくことで、管理者がいちいちユーザの登録をしなくても、特定のコミュニティに顧客からセルフ登録して貰うことが可能です。 セルフ登録を設定するとデフォルトのセルフ登録用のVisualforceページが自動生成されます。 このVisualforceコントローラで、セルフ登録ユーザに割り当てるプロファイル、ロール、権限セット、取引先を指定して利用します。
Force.comサイトの利用
Visualforceページを作成してForce.comサイトを作成して、コミュニティユーザに対してより高度なブランディングを施した画面を提供することも可能です。 標準のページレイアウトや機能では実現できないようなページを提供することができます。 設定→カスタマイズ→コミュニティ→コミュニティを管理する のコミュニティ一覧からForce.comサイトのリンクへ飛べます。
Site.comの利用
公開Webページを作成・管理するSite.comを使ってコミュニティページをカスタマイズすることも可能です。
Site.comはパーツやオブジェクトの項目をドラッグ&ドロップで配置していくことで、ブランディングされた公開ページを作成することができるサービスですが、このSite.comを使用してコミュニティのページを作成することもできます。
ApexやVisualforceといったプログラミングが分からなくても、オリジナルのデザイン、レイアウトのページが作成できます。
設定→カスタマイズ→コミュニティ→コミュニティを管理する
のコミュニティ一覧からSite.comのリンクへ飛べます。
個人情報の公開範囲
最後に、コミュニティを運用するに当たって注意が必要なのが個人情報の公開範囲になります。
Chatterプロファイルで記載した「人」の情報は社内でChatterを使っていれば誰でも見ることができます。
ところがこれでは、同じコミュニティに参加していれば、社員や競合パートナー、顧客の情報を見れるということが普通に起こり得ます。
そこで、コミュニティでは氏名とニックネームを除いた住所や役職、写真、電話番号などの情報の公開範囲を設定できるようになりました。 グローバルヘッダーのユーザ名から飛べる「連絡先情報の編集」画面で表示設定の編集ができます。
・従業員:内部組織のメンバーのみ ・外部:コミュニティやポータルのメンバーを含む
・公開:Site.comやForce.comサイトの公開ページにアクセスするゲストユーザを含む
の最大3段階で、どの項目をどこまでの人に見せるかを指定が可能です。
機能比較
以下に、旧ポータル系とChatterコミュニティとの主な違いを表にしてみました。
旧Service Cloud Portal | コミュニティ for カスタマー | 旧パートナーポータル | コミュニティ for パートナー | |
---|---|---|---|---|
Chatter利用 | × | ○ | × | ○ |
ロール&共有 | ×(※1) | × | ○ | ○ |
レポート | × | × | △(※2) | ○ |
ダッシュボード | × | × | × | ○ |
取引先・取引先責任者へのアクセス | △(※3) | △(※3) | ○ | ○ |
リードの利用 | × | × | ○ | ○ |
商談の利用 | × | × | ○ | ○ |
ケースの利用 | △(※4) | △(※4) | ○ | ○ |
キャンペーンへのアクセス | × | × | △(※3) | △(※3) |
参加メンバーのプロファイル指定 | ○ | ○ | ○ | ○ |
参加メンバーの権限セット指定 | × | ○ | × | ○ |
カスタムドメイン利用 | × | ○ | × | ○ |
標準ログインページのカスタマイズ | × | ○ | × | ○ |
※1 カスタマーポータルは可
※2 実行のみ
※3 参照のみ
※4 自分のケースのみ
おわりに
Chatterコミュニティの機能についてご説明してきましたが如何でしたでしょうか。
私個人としては、アクセス制御やブランディングや高度なカスタマイズ、内部ユーザや外部ユーザのユーザビリティといった細かいところまで行き届いた新機能だと感じました。
カスタマーポータルやパートナーポータル導入のお手伝いも、これまで数多くさせて頂いてきましたが、実際にポータルを使ってきたユーザさん達からは、生まれ変わったChatterコミュニティは、とても歓迎されるだろうなと思います。
また、これからポータル展開をされようというユーザ企業にとっても、とても活用できそうな仕組みになっていると思います。 Summer'13のSandboxでのプレビュー期間は既に始まっていますので、興味のある方は是非触ってみて下さい。
告知
最後に、前回のブログでご紹介したCustom Cloudユーザ会の次回開催のご案内です。
6月17日(月)の16時より、六本木アカデミーヒルズ49 オーディトリアムにて第2回Custom Cloudユーザ会を開催致します!
前回はDataLoaderについて取り上げましたが、今回のテーマはズバリ
「ここまでできる!標準カスタマイズ」
です。
数式項目やカスタムリンクやボタン、分析スナップショットなど、標準カスタマイズを使いこなすことでアプリケーションは色々な広がりを見せてくれます。 そうしたTIPSや実際のユーザの活用事例をご紹介したいと思います。
参加費は無料です。
AppExchangeカンファレンスも同日開催となっておりますので、そちらでもSalesforceにインストールすると便利な様々なアプリに触れることができます。
お時間の許す方は是非是非ご参加下さいませ。
*日付に誤りがありましたため、修正しました(6/10 12:10 時点)