<はじめに>
Dreamforceも最終日が終了しました。 今回も日本からも多くのカスタマー、パートナーが参加しましたが、話題はLightningとAnalyticsで持ち切りでした。 私のエントリーでは、今年のDreamforceの2つの目玉のうち、Analytics Cloudについて取り上げたいと思います。
<WAVEとは>
Analytics Cloud=WAVEはDreamforceで発表されたSalesforceの新分析プラットフォームサービスです。
現地でKeynoteを目にした感触としては、「とんでもないサービスが登場したな」と感じました。 では、具体的に何が「とんでもない」と感じたのでしょう。
WAVEの特徴は、
・高速
・インタラクティブ
・マルチデバイス
・大容量データ対応
・SHARE機能
といった点になります。
これらの要素について少し掘り下げて見て行きたいと思います。
<WAVEの特徴>
①高速
デモでは基幹の在庫データやSNSのメンション、IOT機器からの情報などの膨大なデータを切り口を即座に切り替えながら、好きなグルーピングでクルクルとドーナツグラフや棒グラフに表現する様子が表現されていました。 私も過去に多次元分析ツールの導入に関わった経験もありますが、このパフォーマンスは驚異的です。
Salesforce標準のレポートでも、ある程度以上のデータ件数になってくると、グラフやレポートの描画には一定の時間がかかると思います。 WAVEの検索・表現の処理は一瞬で、ユーザが処理を待たされるという感覚は全くありませんでした。
②インタラクティブ
表示される様々な形式のグラフ等はとても表現力豊かです。 ドーナツグラフはクルクルと回しながら、気になる要素をタッチ(クリック)すれば、すぐにドリルダウンされます。
ドリルダウンもマクロからミクロまで、最終的には個別のレコードの単位にまで、スムーズに掘り下げていくことが出来るようですし、 ドリルダウンしながら、必要なレイヤーを見たい形式のグラフに切り替えて、ビジュアルで直観的にデータを捉えることが出来ます。 アニメーションも非常に滑らかで、グラフからグラフに切り替える際には、各データが画面の上をさーーーっと移動して、横棒から縦棒、円グラフへと、変形していきます。
「WAVE」という愛称は、このアニメーションから名付けられたのだそうです。 タッチパネルなどでは指先で巨大なデータを自由自在に操っている感覚があります。 UIの感触が楽しくて、ついつい長時間あれこれ弄り回してしまいます。 ゲーミングの要素を取り入れたと説明されていましたが、UIによって、データ分析に対する好奇心を喚起する、という効果を感じられました。
③マルチデバイス
前述の高速・インタラクティブな動作はスマートフォンやタブレットといったモバイル機器でも何ら遜色無く行われます。
Lightning同様、WAVEでもレスポンシブデザインが徹底されており、ダッシュボードやグラフは参照するデバイスの解像度に合わせて最適な配置・表示をされ、ストレスを感じることは無さそうです。 客先で「自社に戻って分析します」なんてケースは無くなると思わせるくらい、機器によって機能が縛られるようなことも無さそうです。
④大容量データ対応
先ほど、基幹の在庫データやSNS、IOT機器の稼働データなど、膨大なデータを扱うと書きましたが、BigDataへの対応も売りになっています。 データ量に関わらず高速に動作すると先ほど記載しましたが、大量のデータとなるとパフォーマンスと同様にSalesforceのプラットフォームで気になるのはストレージの圧迫です。
この点については、デモの中では具体的には触れられていませんでしたが、現地でSFDCの技術の方に伺ったところ、WAVEのストレージは、Salesforce組織のデータベースのポッドと同じ場所に外出しで専用のストレージが用意され、オブジェクトレコードが格納されるデータストレージとは別に大容量の領域が用意されるようです。
弊社でもこれまではデータストレージを超える大量のデータを扱いたいといったご要望に対しては、高額なデータストレージを追加購入するよりはSalesforceプラットフォームの外側で解決するアプローチを提案することが多かったのですが、WAVEであればストレージの面でも考慮されているようです。
⑤SHARE機能
特定のグラフの特定の切り口を、上司や顧客から「あっ、これ欲しい!」と言われた時には、その場ですぐにChatterやEメールで共有することができます。 共有する場合にはマーカーやスタンプで注意すべき箇所や伝えたいことをグラフ上に直接書き込むことが出来ます。
技術的な部分では、並列処理で高速化し、データはスキーマフリーであること、サーチベースの検索、レコードに直接インデックスが貼られ、各レコードに属性を持つなど、いくつかのTIPSは紹介されていました。 データソースとしてロード可能なデータもSAPやOracle、Excelなどのアイコンは見て取れましたが、どこまで対応しているのかも気になるところです。 この辺りは徐々に詳細も明らかになっていくと思いますが、これだけの仕組みを一体どうやって実現しているのか、キャッチアップして行きたいと思います。
<WAVEの意義>
LightningがSalesforceプラットフォームの中での枠組みのイノベーションだとすれば、WAVEは枠組みを広げるイノベーションを狙った製品だと思います。
レポート・ダッシュボードはSalesforceが標準で備える分析用の仕組みで、進化を続けていますが、WAVEは本格的な分析ツールに対して、パフォーマンス、データ量の両面で対抗するために打ち出した戦略的製品です。 ただパフォーマンスやストレージを強化するだけでなく、マルチデバイスやユーザフレンドリーなUIなど、付加価値の部分がとても優れていると思います。
Keynoteでは、15年前にSalesforceが創業した際には既存CRMベンダー4社がシェアを持っていたが、Salesforceは市場を大きく塗り替えたこと、それと同様にデータ分析も既存ベンダー4社がシェアを持っているが、WAVEは先進技術でそれを塗り替えて行きたいといった発言もありました。
WAVEがとても意欲的な製品で、データ分析の専門家が専門的なツールを使わなくても、経営者、営業、顧客など、誰でも直観的に楽しく分析が出来、先進技術でデータ分析を身近で楽しいものにしようという気概に満ちているということを感じられました。
<お試し版>
と、ここまで文章でWAVEの先進性を綴ってきましたが、百聞は一見に如かず。KeynoteではiOS向けのWAVEアプリのトライアル環境が紹介されていました。
http://tiny.cc/getanalytics のURLまたはAppStoreで「Salesforce Analytics」等で検索して頂くと、お手持ちのiOSデバイスでWAVEを体験して頂けます。 残念ながら私はAndroidユーザなので、現地で借りたiOSデバイスで触りましたが、SFDCさん、Android版も早めにお願いします!(笑)
<価格>
このWAVE、もう1つ気になるのが価格の面だと思います。
公式サイト(http://www.salesforce.com/analytics-cloud/overview/)では、既に価格も提示されていました。
構築ライセンス:月額250ドル
参照ライセンス:月額125ドル (2014/10/17現在) とのことです。
データ分析の製品は高額なものも多いですし、Salesforceライセンスの価格と比較しても、単価としては決して高くはない料金体系と感じました。 この金額が高いか安いかは結局、導入後にツールを活用して、費用に見合った「効果」を回収できるかですよね。
その点では、ユーザの使いやすさも追求し、定着化しやすい分析ツールとして、競合優位性を発揮できるポテンシャルは大きいと感じました。
<最後に>
日本版のリリースは来年を予定しているということでした。 このWAVEが太平洋を渡るまでもうしばらくかかるようですが、日本に辿り着く頃には更に大きな波になっているかも知れませんね。