Quemix、誤り耐性量子コンピュータ用アルゴリズムを用いて量子コンピュータ実機上で量子化学計算を実施
2024年7月18日
株式会社Quemix
クオンティニュアム株式会社
Quemixが、誤り耐性量子コンピュータ用アルゴリズムを用いて
量子コンピュータ実機上で量子化学計算を実施
~旭化成株式会社との新素材開発の検証実験にて~
テラスカイのグループ会社で、量子コンピュータのアルゴリズム/ソフトウェアの研究開発を行うベンチャー企業、株式会社Quemix(以下、Quemix、本社:東京都中央区日本橋 代表:松下雄一郎)は、Quemixと旭化成株式会社(以下、旭化成)との新素材開発の検証実験において、誤り耐性量子コンピュータ(Fault Tolerant Quantum Computer 以下、FTQC)用アルゴリズムを用いた量子化学計算を、クオンティニュアム株式会社(以下クオンティニュアム)の提供するイオントラップ型量子コンピュータ上で実施いたしましたことをお知らせします。今回の研究で、FTQC向けに開発されたアルゴリズム「PITE®」の有効性と、今後のFTQCの社会実装の可能性が示されました。
超伝導方式やイオントラップ方式、中性原子方式など様々な方式が提案されている量子コンピュータは、素材開発をはじめとするシミュレーション分野における計算加速に貢献すると期待されています。これまで、誤りのある中規模量子コンピュータ(Noisy Intermediate-Scale Quantum device 以下、NISQ)を使用した材料シミュレーション分野での活用が検討されてきましたが、NISQにおいて代表的なアルゴリズムである変分量子固有値ソルバ(Variational Quantum Eigensolver 以下、VQE)による計算の加速が困難であるとの認識が広まり、量子コンピュータを用いた計算加速が示される有用なアルゴリズムならびにアプリケーションの探索が行われている状況でした。
Quemixが開発した量子化学計算アルゴリズム「確率的虚時間発展法:PITE®(Probabilistic Imaginary-Time Evolution)」は量子化学分野における基底状態を求める問題において量子加速が数学的に示されているアルゴリズムの一つであり、FTQC上での動作を前提として開発されたアルゴリズムです。
一方、クオンティニュアムが開発を進めるイオントラップ型量子コンピュータ「H-Series」は、低エラー率かつ全結合を特長とする世界最高クラスの性能を誇るマシンです。回路途中での測定や量子ビットの再利用、量子誤り検出などFTQCの実現に向けた重要な機能を搭載し、リアルタイムでの量子誤り訂正を使用し、誤り耐性量子回路で2つの論理量子ビットをもつれさせることにも成功しました。
今回、Quemixと旭化成で共同実施している新素材開発のための検証実験において、FTQC用の量子化学計算アルゴリズムであるPITE®を用いてクオンティニュアム「H-Series」上で結晶中の量子スピン欠陥の基底電子状態計算を実施し、実機における量子コンピュータ上の量子誤りの影響、量子誤り低減の効果を比較・考察しました。
シミュレーターを用いた理論値「1」に対し、❶H1-1E:エミュレータ(量子誤り検出あり)、❷H1-1:実機(量子誤り検出あり)、❸H1-1(unencoded):実機(量子誤り検出なし)をそれぞれ計測し古典忠実度を算出しました。 その結果、実機(量子誤り検出あり)での検証値は、古典忠実度0.98と極めて高い精度で測定することができました。 実機(誤り検出なし)での検証値と比べ、0.11ポイントも高い精度であり、H-Seriesの量子誤り検出機能の有用性が示されました。※
今回の研究の取り組みは、FTQC向けに開発されたアルゴリズム「PITE®」の有効性や「H-Series」のハードウェアとしての精度の高さを実証するとともに、今後のFTQCの社会実装の実現に貢献できるものと考えております。
本発表に際して、クオンティニュアムのアジア・日本地区販売代理店である三井物産様より、エンドースメントをいただいております。
三井物産株式会社 コーポレートディベロップメント本部 総合力推進部 量子イノベーション室長
越田 誠様
「Quemix様が今回実施された弊社の量子分野における戦略パートナーであるクオンティニュアムの量子コンピュータ「H-Series」を活用した量子化学計算の検証実験において、「H-Series」の有用性が示されたことを歓迎いたします。今後両社の取組みが素材開発分野における新たな顧客価値の提供につながるよう今後も支援してまいります。」
※参考資料
検証 |
値 |
古典忠実度(0~1) | |
❶ |
H1-1E |
エミュレータ(量子誤り検出あり)での検証値 |
0.97 |
❷ |
H1-1 |
実機(量子誤り検出あり)での検証値 |
0.98 |
❸ |
H1-1(unencoded) |
実機(量子誤り検出なし)での検証値 |
0.87 |
本研究の内容は以下の論文をご参照ください。
https://arxiv.org/abs/2407.10555
本研究成果につきましては、2024年7月24日・25日に東京・六本木で開催されるQ2B 2024 TOKYO内での弊社ケーススタディセッションにて発表いたします。
Q2B 2024 Tokyo公式サイトURL:https://q2b.qcware.com/2024-conferences/tokyo/
2024年7月25日(木)14:40-15:00
「革新的な新素材の研究開発を加速させる量子コンピューティング技術への可能性」
■本プレスリリースの問い合わせ先
メディアからのお問合せ・・・株式会社テラスカイ 広報担当 pr@terrasky.co.jp
研究に関するお問合せ・・・・株式会社Quemix https://www.quemix.com/contact
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